SHINICHI OSAWAが、はじめてレコードに針をおとした瞬間。

毎週迎える全52組のゲストDJ/アーティストが選曲したプレイリストとともに、その“アーティスト像の裏側”= “BEHIND THE MIX”を探っていく『RDMS Powered by SMIRNOFF』。

ゲストの選曲から導き出される、バックグラウンド、歴史、価値観、哲学に迫る!

記念すべき第1回目のゲストは、DJとして、楽曲のリリースやリミックスはもちろん、そのパフォーマンスが海外でも認められ、プロデューサーとしてもヒット曲を多数生み出してきた大沢伸一。ラテン、ジャズ、ハウス、テクノ、エレクトロとあらゆるジャンルに精通し、常に進化をつづける彼の“アーティスト哲学”とは!?

CHOICE 1
ダンスミュージックにのめり込む最初の“種”となった曲
“FIRE CRACKER” YMO

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FIRE CRACKER
YMO

ジャンル: エレクトロニック, ミュージック, J-Pop, オルタナティブ, ニューウェーブ,ロック

1978年にリリースされたYMOのデビューアルバム「YELLOW MAGIC ORCHESTRA」収録。原曲はアメリカのミュージシャン、マーティン・デニーによるもので、YMOの結成秘話として、「FIRE CRACKER」のカバーをするためだったというのは、よく知られている。

「僕はテクノポップからダンスミュージックに入ったんです。テクノ初期のソリッドなサウンドにグルーヴが存在するのは、いま思えばこの曲しかないのかなって」

と大沢伸一は選曲の理由を挙げるが、イントロのコンピューターゲームのような音色(当時としては非常に斬新な手法)から、生音を融合させてオリエンタルなメロディや厚みを持たせていく曲調は、いま聴いてもなお新鮮だ。日本はもちろん、アメリカでもヒットを記録し、YMOの名を世界的に広めた代表曲のひとつである。

CHOICE 2
初めてDJをしたときのセットから1曲
“SAMBA NO PE” Blue Rondo A La Turk

“ローマは一日にして成らず”。いまやグローバルな活動を展開するトップDJ、SHINICHI OSAWAにも初めてのDJの瞬間はあった。

「1982~83年くらいだと思います。場所は、京都のレストランなんですが、土曜日の23時を過ぎると、どこからともなく誰かがターンテーブルを持ってきて、めちゃくちゃなことになるんですよ(笑)。
ジャンルもめちゃくちゃ。ニューウェイブもパンクも、ヒップホップもなんでもあり。当時は、ニューウェイブから色んなジャンルが派生して、この曲もファンクとラテンが融合した“ファンカラティーナ”というサウンドの代表格でした」

と大沢自身が当時を振り返る。Blue Rondo A La Turkは、マット・ビアンコの前身バンドで、本曲は1984年リリース作品。
ファンカラティーナは、カルチャークラブやヘアカット100などのバンドに牽引され、世界的なムーヴメントを起こした。UKジャズやアシッドジャズ周辺と交わりながら、現在のダンスミュージックへのプロセスを築いた一方で、ネオアコとともにいわゆる“渋谷系”にも一定の影響を与えたことを考えると、現行の音楽ジャンルが偉大なる先達たちが、試行錯誤を繰り返して生み出したものだと理解できるはずだ。まさに“ローマは一日にして成らず”。

CHOICE 3
大沢伸一にとって、完璧な曲
“STAR GUITAR” THE CHEMICAL BROTHERS

もし“完璧な曲”があるとしたら、“音楽の発展・進化”はないかもしれない。だからこそ興味を惹くこの質問に対し、大沢はこう答える。

「SHINICHI OSAWAのソロ名義を始めるときに、この曲をカバーしました。ダンスミュージックの“ループの繰り返し”という様式美がありながらも、ポップミュージックとしても成り立っているというのは、非常に珍しかった。それでいて世界的にヒットするってすごいことだな」

「STAR GUITAR」は、ご存知ケミカル・ブラザーズの代表曲にして、ジャンルを超越して世界的な大ヒットを記録したアンセム。ミュージシャン・大沢伸一にとってダンスミュージックとポップミュージックの視点から捉えたとき、そのバランスという意味で“完璧”だったのかもしれない。しかし、その“完璧”な楽曲をカバーしているというのが、大沢のアーティストとしての挟持と貪欲さだろう。

「目指す音楽は?」という質問に対しては、
「誰にも似てないものを作りたいと常に思っているので、逆に言えば目指したいものを想定しないでクリエイトするようにしています」

求めるのは“オリジナリティ”。彼の視点は、“完璧”のその先を見据えている。

CHOICE 4
今までも、これからも、繰り返し聴くであろう永遠の名曲
“EACH AND EVERY ONE” Everything But The Girl

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EACH AND EVERY ONE
Everything But The Girl

ジャンル: オルタナティブ, ミュージック, ダンス, ロック, アダルト・アルタナティブ, ジャズ, カレッジ・ロック, ヴォーカル, ヴォーカルポップ

1984年リリースのEverything But The Girl(以下EBTG)のファーストアルバム「EDEN」収録。

「誰もがめっちゃいい曲だねっていうかどうかはわからないんですが……。少年時代から聴いて、30年以上も聴き続けているのはなんだろう?って考えたときに思いついたのがこの曲」

EBTGは、アルバムごとに作風を変化させ、初期のネオアコ~AORのサウンドから後期のブレイクビーツ~ディープハウスまで、実に多岐にわたる作品を発表してきた。メンバーのベン・ワットは、ディープハウス系のDJ、レーベル主宰者としても活動をしていたので、そちらをご存知の方も多いだろう。YMO、Blue Rondo A La Tirkと同様に、大沢伸一のルーツを感じられる興味深い選曲だ。現在のスタイルの印象が強い方は、MONDO GROSSO時代の曲を聴くと、これらの楽曲とのリンクが見えてくるはずだ。

CHOICE 5
くやしいけど正直この人はカッコいい!
“BUGATTI” TIGA

「僕らは大沢さんをカッコいいと思ってるけど、そんな大沢さんはどんな人をカッコいいって思うんだろう?」というブライアンの問いに、大沢は、

「基本的にはセルアウトをしていない人。その中でもTIGAがかっこいい。アンダーグラウンドでもオーバーグラウンドでも、セルアウトのやり方ってあるんですけど、彼は一貫して“自分のやりたいこと”しかしない。客がドン引きしていてもブレない(笑)。『BUGATTI』もこんな変態的な曲なのに、世界的なヒットするのもすごいですよね」

と答える。
00年代のエレクトロブームで頭角を表したスーパースター、TIGA。洒脱な伊達男といった風貌に加え、「Sunglass At Night」に代表されるエロティックな楽曲の数々で、現在もカリスマ的な人気を誇っている。「BUGATTI」は、2014年にTIGA主宰のTurbo Recordingsからリリースされた比較的最近の楽曲。ダークなハメ系トラックで、TIGAのアーティスト性をよく現した1曲だ。

CHOICE 6
自分が手がけた曲の中で、今夜スタジオでみんなと一緒に聴きたい曲
“BUSH” OFF THE ROCKER

「やはりクリエイターにとっては、一番新しい作品が代名詞になる。まだリリースはしていないですが、『SOFA DISCO 2015(仮)』というアルバムに収録される楽曲です」

OFF THE ROCKER(SHINICHI OSAWAとMASATOSHI UEMURAのユニット)の最新曲。「SOFA DISCO」は、その名の通り“ソファに座って、ダンスミュージックを楽しむ”をコンセプトに、代々木VILLAGEをホームに全国的に開催されているパーティ。同名のミックスCDも2013年から毎年リリースされており、「BUSH」はその最新作に収録される予定となっている。彼が仕掛ける普段とは異なるダンスミュージックの提案、ぜひご一聴いただきたい。

昨今のプレイスタイルに共通する楽曲から、過去に影響を受けた楽曲、さらには自身の最新楽曲まで幅広い選曲で楽しませてくれた大沢伸一。そこには、

「多くのアーティストはひとつのカラーしか出さない人が多い。でも、リスナーの時はみんな自由だったはず。リスナーとクリエイターの線引きは、僕は全然いらないと思っている。プロのリスナーであり、プロのミュージシャンでありたい」

という本人の確固たる信念がある。各楽曲に“意味を持たせ”、アーティストとしての哲学も匂わせてくれた今回の選曲は、“DJ”としての“在り方”以上に、オーディエンスとしての楽しみ方も示唆してくれるようでもある。
クラブに遊びに行き、DJのプレイに盛り上がる。そのとき楽曲の流れ、曲の意味合い、背景を少しでも知っていると、より現場での楽しみ方が広がる。そう思わせてくれる貴重な選曲になった。

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