RHYMESTERがビビる、あのパイセン、マジやばいっす!

毎週迎える全52組のゲストDJ/アーティストが選曲したプレイリストとともに、その“アーティスト像の裏側”= “BEHIND THE MIX”を探っていく『RDMS powered by SMIRNOFF』。

ゲストの選曲から導き出される、バックグラウンド、歴史、価値観、哲学に迫る!

第5回目は、日本のヒップホップ黎明期から活躍をつづけ、そのパフォーマンスのクオリティの高さから“King Of Stage”の異名を持つRHYMESTER(Mummy-D、宇多丸、DJ JIN)が登場! デビューから25年以上最前線でマイクを握り、今年新レーベルを設立し、新たな第一歩を踏み出したRHYMESTER。
7月29日には通算10枚目となるアルバム「Bitter, Sweet & Beautiful」をリリースしたばかり。
ベテランと呼ばれつつも常に革新的な活動を展開し続けるヒップホップレジェンド。そのアーティストとしての“裏側”とは!?

CHOICE 1
あなたが思う「ベテラン アーティスト」の一曲
Busta Rhymes & Q-Tip“This Is Cool, Thank You 2014”(Mummy-D)

Mummy-D「質問を見て、自然と浮かんだのがこの曲。まずラッパーとして10年以上やりつづけること自体が凄いんだけど、この曲の凄さはフックがないということ。ビートも単調にループしているだけで、ラップのスキルだけで聴かせる曲になっている。
年をとると、守ってしまいがち。曲を作るにしろ必勝パターンがあったりね。でも、おっさんほど攻めてないとダメだなって。もっとふざけようぜって、そういうベテランになりたいね」

佐野元春&THE COYOTE BAND“バイ・ザ・シー”(宇多丸)

宇多丸「日本のヒップホップシーンから選ぼうとしても、俺らが最長老みたいな感じだからね(笑)。いままで色んなアーティストを見てきたなかで、かっこいいな~って思ったのは、佐野元春さんだった。
もちろんレジェンダリーなんだけど、俺らに対しても同じ目線で話してくれるし、敬語を使ってくれる。上から目線でものを言う人では絶対ない。いくらキャリアを積んでも、謙虚でオープンマインドでいきたいなって」

D’Angelo and The Vanguard“Another Life”(DJ JIN)

DJ JIN「ベテランになっても、そういう扱いを受けるのではなく気さくに気軽に話しかけてほしいですよね。昔から俺らを知っている人から見れば、緊張しちゃうかもしれないけど、3人とも飲みながら話せるおっちゃんなんで(笑)。
この曲は、昨年の終わりに14年ぶりに3枚目のアルバムを出したD’Angelo。
ベテランなのに、3枚目…(笑)。リリースもなければ、ライブもしない。でも、どんどん神に近づいている(笑)。」

三者三様、ベテランのあるべき姿に個性があって面白い。守らずに攻めたいMummy-D。いくら実績とキャリアを積んでも常に謙虚な姿勢でいたい宇多丸。そして、特異な存在として、何もせずとも勝手に周りが神格化していくD’Angeloを挙げたDJ JIN。キャリアを積んできたからこそ見えてくる無理のない理想像は、RHYMESTERのようなアーティストに限らずとも、社会に生きている人ならば、ある程度は保持しているはず。皆さんの理想像はどれに近かっただろうか?

CHOICE 2
あなたが思うアブない曲
椎名林檎“君ノ瞳ニ恋シテル”(Mummy-D)

itunes

君ノ瞳ニ恋シテル
椎名林檎

ジャンル: ロック, ミュージック

Mummy-D「すごい有名な曲で、原曲は“Can’t Take My Eyes Off You”。誰もが知っているいい曲なんだけど、椎名林檎さんのカバーはとにかくエグい(笑)。アレンジもそうだし、サビには入っちゃいけない音とか入ってんのよ。
2000年の曲で、その頃の俺らって『ヒップホップ最高!イエー!!』みたいなノリで、他のジャンルの音楽に興味がなかったんだけど、当時にこんなアブないアレンジで尖ったことやっていたのか、ってすごいショックを受けた」

Kanye West“On Sight”(DJ JIN)

itunes

On Sight
Kanye West

ジャンル: ヒップホップ/ラップ, ミュージック, ラップ, ハードコア・ラップ

DJ JIN「カニエ・ウェストは奇才ですよね。でもその一方で、彼を見ていると、そのアブなさをウリにしているだけに、逆に大変なんじゃないかなって(笑)。なんか変なことしないと!みたいな」

Ol’Dirty Basterd“Shimmy Shimmy Ya”(宇多丸)

itunes

Shimmy Shimmy Ya
Ol’Dirty Basterd

ジャンル: ヒップホップ/ラップ, ミュージック, ラップ, ハードコア・ラップ, ヒップホップ, イースト・コースト・ ラップ, ロック

宇多丸「2人が選んだのはまだまだアブなくない(笑)。この人はアブなすぎて短命に終わってしまった。
Wu-Tang Clanのメンバーなんだけど、数々の奇行のおかげで施設に入れられていた。でも、そこから脱走して、車を乗り継いで、アメリカ大陸を横断して、Wu-Tang Clanのライブに登場したっていうエピソードがあったりとか、とにかくブッ飛んでいる人」

“アブない”は音楽的に言えば、ときに最上級の褒め言葉になる。平易に言ってしまえば、“ヤバい”に近いが、ヒップホップを中心に多種多様なジャンルのアーティストとコラボレーションし、国内外の楽曲に精通しているRHYMESTERの3人が“アブない”と感じたこの3曲は、巷に溢れている“ポップ”な楽曲と一線を画していることだけは確か。“アブない”のは、演奏なのか、歌詞なのか、アティチュードなのか、それは様々だが、表現者として“他者と違う”ということは大きな武器となる。

CHOICE 3
RHYMESTERに訊きたい! 最近気になるニュースは何ですか?
Public Enemy“Fight the Power”(宇多丸)

itunes

Fight the Power
Public Enemy

ジャンル: ヒップホップ/ラップ, ミュージック, イースト・コースト・ ラップ, ハードコア・ラップ

宇多丸「言いたいことはいっぱいあるんだけどね、やっぱりもっとも旬なのは新国立競技場の件だよね。(※番組オンエアは2015年7月31日)
2500億円の工事費が問題になっているけど、そのお金があれば出産費用の完全無料化や待機児童をゼロにできる計算なんだよね。もちろんね、森元首相の『たった2500億円』という発言もね、国家的プロジェクトだからわかるよ。でも、少子化対策ができちゃうんだよ!? ならね、その“たった2500億円”を捻出して、少子化対策しちゃえばいいじゃん。
この曲を聴いて、戦おう!ってことで、Public Enemyです」

RHYMESTERを“社会派”と表現すると語弊があるかもしれない。しかし、元来ヒップホップはレベルミュージックであり、マイノリティや弱者の側に立ったメッセージが込められ、ビートに乗せて発せられてきた。そういった意味で、攻撃的で歯に衣着せぬリリックを武器に全米でヒップホップが市民権を獲得するのに大きな貢献をしたPublic Enemyの“FIGHT THE POWER”は、その原点とも言うべき曲だろう。
常に新しいことに挑戦しつつも、原点を忘れないヒップホップマナーこそが、RHYMESTERが25年以上にわたり支持を獲得している要因のひとつだろう。

CHOICE 4
あなたが思う、アブなくない曲
Daft Punk“Get Lucky”(Mummy-D)

Mummy-D「オーソドックスに、いわゆるグッドミュージックをやることが逆にフレッシュだってことを提示したDaft Punkは新しかった。そういった意味で、いまは両極化の時代なんでしょうね。“アブなくない”の意味の解釈は難しかったけど、少なくとも“Get Lucky”は耳に痛い音がひとつもない」

Slum Village“Untitled/Fantastic”(DJ JIN)

itunes

Untitled/Fantastic
Slum Village

ジャンル: ヒップホップ/ラップ, ミュージック, ヒップホップ, アンダーグラウンド・ラップ

DJ JIN「その後の音楽シーンをより良くしていった(=アブなくしなかった)という意味で選びました。Slum VillageはJ・ディラが所属していたグループなんだけど、現在のクリエイター、ビートメイカーで彼から影響を受けていない人なんていないでしょう。
いまの音楽シーンを面白くしてくれたのは、彼の功績が大きいと思います」

“アブなくない”曲というのは、実に難しい。捉えようによっては、尖っていない普通の楽曲というマイナスイメージになってしまうかもしれない。しかし、そこはさすがのセレクト。Daft Punkの“Get Lucky”は、ファレル・ウィリアムズ、ナイル・ロジャースをフィーチャーし、EDM全盛期において、生音を基軸にしたサウンドでカウンターとしても機能。同曲は第56回グラミー賞で3部門を受賞するなど、歴史的な1曲となった。
DJ JINが挙げたのは、“最も偉大なビートメイカー”と称されるJ・ディラ。現代の多種多様なビートメイクは、彼の存在なくしては語れないだろう。
2曲ともに良い意味で、決して“アブなくない”楽曲だと言える。

CHOICE 5
そんなRHYMESTERが届けてくれる、最新曲!
RHYMESTER“Kids In The Park feat. PUNPEE”

Mummy-D「今回の作品では、音楽がバラ売り、バラ聴きの時代だけど、アルバムというフォーマットにこだわった。リリックもアルバム全体を見ながら、“この曲でこう言ってるから、この曲ではこう言おう”って感じで最後まで微調整しました。流れで楽しめて、1回目より2回目、2回目より3回目の方が楽しめるアルバムになったと思いますね。」

最新アルバム「Bitter, Sweet & Beautiful」には、プロデューサーにPUNPEEほか、KREVAやBACHLOGICらが参加。Mummy-Dの発言にあるようにオリジナルアルバムでありながらも、“美しく生きること”をテーマにコンセプチュアルな1枚となっている。“バラ売り”“バラ聴き”という発言もあるが、アルバムのジャケットデザインは三輪の“薔薇”。真意を深読みしてみるのも面白いかもしれない。

3人グループは初参加となった『RDMS powered by SMIRNOFF』。ひとつのグループとしての共通点もありながら、メンバーそれぞれが強烈な個性を放つRHYMESTERならではのユニークな選曲が見られた回となった。

特に面白かったのは“理想のベテラン像”。ひたすら突っ走ってきたら、気がつけばシーンの最長老になっていたと振り返りつつも、こんなアーティストになりたいと語る3人の姿勢は、まるで新人アーティストのように真摯だ。彼らは“ベテラン”と呼ばれようとも、前を向いて走り続ける。その姿勢を失わないからこそ、25年以上にわたり、ヒップホップの垣根を越えてあらゆるシーンからも支持を獲得しているのだろう。

OTHER ARTIST
続けて読みたい! あなたにオススメの記事