Zeebraは語る。「当時、日本でヒップホップをやることは無駄だったかもしれない??」

毎週迎える全52組のゲストDJ/アーティストが選曲したプレイリストとともに、その“アーティスト像の裏側”= “BEHIND THE MIX”を探っていく『RDMS powered by SMIRNOFF』。

ゲストの選曲から導き出される、バックグラウンド、歴史、価値観、哲学に迫る!

第6回目は、前回のゲストであるRHYMESTER同様に、日本のヒップホップ黎明期から活躍を続けるレジェンド・Zeebraが登場! ユニット・KGDR、ソロでの活躍から、ヒップホップシーン、クラブミュージックカルチャーの意識向上をも考えた活動は、ジャンルを超えて多くの支持を獲得している。今回は、そんなレジェンドアーティストの知られざる“裏側”にプレイリストから迫ってみたい!

CHOICE 1
聴いて泣いた事がある曲
NAS「ILLMATIC」(アルバム)

「ナズのドキュメンタリー映画「NAS/タイム・イズ・イルマティック」がDVD化されたタイミングもあって、最近久しぶりに「ILLMATIC」を最初から聴いた。曲に映画「ワイルド・スタイル」のワンシーンの音が挿入されている箇所があって、グラフィティをやっているところにその少年の兄貴が帰ってきて『なにやってんだ!? お前は毎日こんな無駄なことをやっているのか!?』って言うんだ。それが20年以上前に自分たちが日本でヒップホップを始めたときの記憶と重なって、涙が流れた。確かに、あの頃に日本でヒップホップをやることは無駄なことだったかもしれない。でも、こうやってシーンが根付いていて、これまでの苦労や苦悩が報われたような気持ちになった」

孤高のリリシストとして、ヒップホップ史はおろか、音楽史にもその名を刻むナズの名盤「ILLMATIC」。たとえまだそう多くのリスナーには理解されずとも自分の信念を貫くことが、どれだけ大変で辛いことかをZeebraはパイオニアとして経験してきた。いまでは、ヒップホップは日本でもジャンルとして確立され、シーンには若手アーティストが次々と現れ、活況を呈している。いまのシーンが先人たちの挫けない強固な意思によって存在することを忘れてはいけない。

CHOICE 2
HIPHOP以外で、Zeebraにとっての永遠の名曲
Stevie Wonder “Another Star”

itunes

Another Star
Stevie Wonder

ジャンル: R&B/ソウル, ミュージック, ロック, ソウル, アリーナロック, ファンク, モータウン, ポップ, ポップ / ロック, コンテンポラリー R&B

「永遠の名曲はいっぱいありすぎてね……(笑)。DJもやっているからもちろん新譜もチェックしているんだけど、チルアウトするときに聴くのは、70~80年代の曲が多い。さらに定番中の定番が好きだったりする。その中でもいまは夏なので、夏っぽい曲を選びました!」

コメント通り、セレクトしたのは1976年リリースのスティーヴィー・ワンダーのアルバム「Songs in the Key of Life」の収録曲。同作は、スティーヴィー・ワンダーのカタログのなかでも最高傑作と称される1枚で、収録曲の多くがシングルカットされた大ヒット曲。
「Another Star」は、ニューソウルにサルサという当時の最新スタイルを取り入れた楽曲で、夏の夕暮れにピッタリの情緒溢れるサウンドとなっている。

CHOICE 3
いまもがんばっている同世代アーティストの一曲。
RHYMESTER “Kids In The Park feat. PUNPEE”

「やっぱりRHYMESTERになるよね。“アルバム”という概念が薄れていくなかで、彼らの最新作はコンセプチュアルな作りになっていて、その辺もニクいよね」

Zeebraが所属していたKGDR(当時はキングギドラ名義)と同様に、日本のヒップホップ黎明期から活動し、現在でもシーンの第一線で活躍をつづけているRHYMESTER。先週の同番組にゲストとして出演した彼ら。「泣いた曲」でZeebra本人がコメントしている通り、まだ理解者の少ない状況下での共闘者というのは特別な存在。しかも、いまだ現役バリバリで活動しているとなると、“あいつらには負けたくない”といった思いも生まれるはずだ。

CHOICE 4
Zeebraがいま注目している若手世代アーティストの曲
BAD HOP “New Root”

「『高校生RAP選手権』(Zeebraは審査委員長を務める)が始まって、若い世代でも中高生の間ですごく盛り上がっている。俺のレーベルに所属している2WINも、『高校生RAP選手権』で優勝したから皆も知っていると思うけど、ヤツらのクルーがまた面白い。川崎の、いわゆる“悪いヤツら”なんだけど、個性と才能の坩堝ですよ。俺らのひとつ下の世代の場合は“『さんピンCAMP』を超えろ!”って意識があったと思うんだけど、もう一周しちゃっていて、彼らは“『さんピンCAMP』なんて知らない”っていう世代なんだよね。それがいい意味で機能している。ストリートのイキのいいヒップホップが久しぶりに出てきたと思う」

BAD HOPは、2WIN(T-PABLOW、YZERR)に加え、Tiji Jojo、BARK、Yellow Pato、G-Kid、Benjazzy、AKDOWの8人組ユニット。今年の7月2日に2WINの1stアルバム「BORN TO WIN」、BAD HOPの1stアルバム「BAD HOP」が同時発売され、高い注目を集めている。その「BAD HOP」収録の「New Root」は、Zeebraが指摘するとおり、まったく新しい世代の萌芽を象徴するタイトルといい、まさに邦ヒップホップ界の新時代到来を告げる1曲だと言える。

CHOICE 5
風営法とクラブの関係について
これまでの活動で解決できたこと/まだ残っている課題
それに関連して一曲
Zeebra “STREET DREAMS”

「風営法が改正されることになったのは、ひとつ大きなこと。みんなに感じてほしいのは、“本気になれば世の中も変わる”ってこと。『どうせ俺が何かしたって変わらねえよ』って思っちゃうかもしれないけど、そんなことはない。俺はそれを証明したくて、ずっと運動してきた。でも、まだまだクラブ周辺のコミュニティに一切迷惑を掛けていないかっていうと、そうではない。だから、ここまではやっていい、これはダメ、っていう細かいルールを決めていく必要がある。俺らも社会の一員だから、しっかりルールを守って、責任を持って楽しんでいこう」

“不可能を可能にする”ことに常に挑戦してきたZeebraの熱いメッセージが込められた彼の代表曲(2009年作)。“夢を諦めるな”なんて綺麗事を歌う歌は、巷にあふれているが、そんな類の曲とは一線を画する“熱”のこもったこの曲は必聴。
弱気になったときや悩んだときに聴くと、まるで横からZeebra兄さんが叱咤し、背中を押してくれるような、そんな気にさせてくれる。

2回連続でヒップホップレジェンドがゲストとなった。前回のRHYMESTERと今回のZeebra。同時期にキャリアをスタートさせ、ともにシーンを牽引してきた2組だが、質問内容が違うといえど選曲のベクトルの違いも明確に出ているのが面白かった(ぜひ前回と聴き比べをしてほしい)。
共通点は、シーン全体の向上を考えていること。Zeebraは、若手の育成、風営法改正への尽力、TV出演など“アイコン”として、“セルアウト”との批判も辞さずに“ヒップホップシーン向上”のために行動してきた。そんなZeebraのセレクトだからこそ、それぞれの楽曲が愛に溢れているのも当然だったろう。
純粋に「本当にかっこいいから、聴いてくれよ!」という思いがストレートに表れた選曲は、奇しくもヒップホップの過去、現在、未来図を指し示しているかのようだ。

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