DJでなれければ格闘家!? そんなKEN ISHIIのリング登場曲とは?

毎週迎える全52組のゲストDJ/アーティストが選曲したプレイリストとともに、その“アーティスト像の裏側”= “BEHIND THE MIX”を探っていく『RDMS powered by SMIRNOFF』。

ゲストの選曲から導き出される、バックグラウンド、歴史、価値観、哲学に迫る!

第7回目は、東洋の“テクノゴッド”として、世界中を飛び回るKEN ISHII。1990年代から活動をスタートすると、ベルギーの名門レーベル:R&Sレコードと契約、イギリスのNME誌でベストテクノDJに選ばれるなど、20年以上にわたりテクノシーンを牽引してきたトップアーティストだ。普段の作品やDJプレイでは見えてこない、「RDMS」ならではのお題で、改めてKEN ISHIIの偉大さを感じることができるはず!

CHOICE 1
格闘技の入場テーマにしたら最強だと思う曲
Ministry“Stigmata”

「10代の頃から聴きまくっていましたね~。格闘技の入場テーマということで、かなり乱暴で凶暴で突っ走っている曲だし、これで入ってきたら最強だと思います。実際にこの曲を使っているファイターは僕の知る限りではいないんですが、悪人顔しているような人にはピッタリだと思います」

音楽業界屈指の格闘技マニアとして知られるKEN ISHIIならでは質問だったが、チョイスしてきたのはUSインダストリアル・メタル界の重鎮であるMinistryの“Stigmata”。
KEN ISHIIがコメントしている通り、筋肉ムッキムキのタトゥーだらけの凶暴なファイターが入場するシーンが容易に想像できる。

CHOICE 2
テクノゴッドにあえて訊きたい! テクノをまったく感じない曲
Lee Perry and The Upsetters “Blackboard Jungle Dub”

itunes

Blackboard Jungle Dub
Lee Perry and The Upsetters

ジャンル: レゲエ, ミュージック, エレクトロニック, ルーツ・レゲエ, ダンス, ジャングル / ドラムンベース, Dub, ロック

「他ジャンルについての質問をされることは少ないので、すごく迷いましたね。ダブ、レゲエは昔から好きで、音楽から完全に離れている時間帯によく聴きます。特に70年代のLee Perryはすごく好きですね」

アーティストという職業柄、KEN ISHIIの周りには常に音楽がある環境、しかもやはりそれはテクノ系のサウンドばかりとなっているはず。そんな彼の休息時、つまりリラックスしたり、音楽制作以外の時間を過ごすときによく聴くのがダブ~レゲエというのは、ちょっと意外ではないだろうか?
“テクノゴッド”ともなると、当然他ジャンルの音楽にも深く精通しており、様々なインスピレーションを得ているのだろう。

CHOICE 3
テクノゴッドにあえて訊きたい! テクノしか感じない曲
Kraftwerk“Numbers”

itunes

Numbers
Kraftwerk

ジャンル: レゲエ, ミュージック, エレクトロニック, ルーツ・レゲエ, ダンス, ジャングル / ドラムンベース, Dub, ロック

「Kraftwerkの中でも、最強のテクノだと思うのがこの曲です。まずタイトルが“Numbers(=数字)”で、収録されているアルバムが『Computer World』ですからね。Kraftwerkに関しては、リスペクトの対象としてこれ以上はないって存在。格闘家と比べると?(笑)。格闘家は小さい頃の夢でしたけど、いまはアーティストとして飯を食べさせてもらっているので……やっぱりKraftwerkが上ですかね(笑)」

いまだ現役で、近年でも3Dライブを行うなど革新的な試みをつづけているテクノ・レジェンド・Kraftwerk。“Number”は、1981年の彼らのアルバム「Computer World」に収録されており、歌詞は単に1から8の数字を告げるだけ。まさに当時の“デジタル音楽=仮想未来”を表現するのに相応しい楽曲となっている。

CHOICE 4
そんなKEN ISHII(Flare)の最新作「Leaps」から一曲
Flare“Mole Tonnel”

「KEN ISHII名義では、ダンスフロアでのテクノだったり、お客さんのことも考えて制作しているんですけど、Flare名義では本当に自分がやりたいことだけを突き詰めています。いまは誰でも楽曲を出せるし、誰でもアーティストになれる。そんな時代だからこそ、1~2年間考えたことをまとめて発表する意味があるし、だからこそリスクを背負ってでもアルバムという形にこだわりたかった。
この“Mole Tunnel”はアルバムの冒頭の曲で、これまであまり使ってこなかったTB-303というシンセサイザーを使ってみて、ダブっぽさを出してみました」

ローランドのTB-303は、1980年代後半のアシッドハウス全盛時代に一躍脚光を浴びた名機で、現在でもリッチー・ホウティンなど多くのトップアーティストから愛されている。
“Mole Tonnel”は、KEN ISHII名義とは一線を画すザラついたアシッド感を楽しめる1曲となっている。

CHOICE 5
KEN ISHIIが選ぶ極上のラブソング
Mahsvishnu Orchestra“Power of Love”

「こういうお題に答えたのは、初めてでしたね。意識的にラブソングを聴くことはないんですが、昔から頭にあった数少ないラブソングのひとつを選びました。いわゆる男女間の“ラブ”というより、もっと深くて、大きい“ラブ”を感じますね。これも70年代の曲ですが、ギター、ストリングス、ピアノというシンプルなコンビネーションなんですけど、コード進行も工夫されている」

マハヴィシュヌ・オーケストラは、ジャズ~フュージョン界最高のギタリストと称されたジョン・マクラフリン主導のもとに結成された、当時を代表するバンドのひとつ。
ジャズやロックには珍しいヴァイオリンに、エレキギターやシンセサイザーも導入。クラシックに、ロック、ファンク、ジャズ、インド音楽などありとあらゆるジャンルが融合した構成は、当時のシーンで強烈な異彩を放った。

CHOICE 6
理想的なパーティーで流れる曲(昼編)
Titonton Duvante“Impasse”

「理想のパーティーは、いわゆる音楽マニアだけではなくて、何も知らないで来たお客さんもいて、男女比も同等。色んな人がいるのに同じように楽しむ。ウォームアップから徐々に盛り上がっていって、ピークタイムにはシャウトがあり、酔っ払って、朝を迎える。本当にいいのは、何をプレイしても盛り上がるという状況ですね。規模は500人程度が一番いいかも。自分の好きなことができつつ、お客さんのコントロールも利きますからね。昼の曲として選んだこの“Impasse”は、デトロイトテクノの流れにいるアーティストで、テクノ~ハウスの中間のようなフィーリングですね。ウォームアップにちょうどいい楽曲ですよね」

理想的なパーティーで流れる曲(夜編)
Slam & Gary Beck“Pressure Lights”

「スラムもゲイリー・ベックも普段からヘビープレイしているテクノらしいアーティストなんですけど、この2人はなにを出してもOKですね。メカニカルでマシーンビートな感じが、ピークタイムにピッタリですよね。」

理想的なパーティーで流れる曲(朝編)
Gabriel D’Or & Bordoy“Ultratena”

「最近のフランス人デュオで、メロディアスな曲になっています。最近は毎回プレイしていますね。お客さんが『もう1曲かけてくれ!』って騒いで、なかなか終われないこともあるんで、この1曲で気持ち良く帰ってくれ!って感じですかね(笑)」

語ってくれた“理想のパーティー”と選曲は、クラブミュージックを愛するものなら、すぐにその光景が頭に浮かぶようなリアルなものではないだろうか。
“昼編”にセレクトしてくれた“Impasse”は、“昼”というよりクラブのオープン直後の時間帯に近いだろうか。
そして、ピークタイムの盛り上がりから朝方の“まだまだパーティーを終わりたくない!”という気持ちをなだめてくれるようなセレクト。大体は2時間で流れをつくるDJプレイだが、もし“3曲で一夜を表現しろ”というお題目なら、これほどフィットする選曲もないかもしれない。ぜひ楽曲を聴きながら500人規模のお客さんで埋まったクラブの一夜を思い浮かべてみてほしい。きっと今夜にでもクラブに行きたくなるはずだ。

“テクノゴッド”たる所以と、知られざる一面、その両方を垣間見ることができた素晴らしい選曲となったのではないだろうか。まさかのMinistryやLee Perryから、ひと味ちがったラブソングのセレクト。この辺りは、KEN ISHIIに対して、驚きとともにフレッシュなイメージを持ったはずだ。
そして、何より理想のパーティーのくだりである。都合3曲をセレクトしてもらったが、たった3曲で一夜を表現したかのような秀逸さ。これぞKEN ISHIIがテクノシーンのトップである証明だとまざまざと見せつけてくれる。

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