クラブシーンにおけるレジェンド オブ レジェンド、高木完

毎週迎える全52組のゲストDJ/アーティストが選曲したプレイリストとともに、その“アーティスト像の裏側”= “BEHIND THE MIX”を探っていく『RDMS powered by SMIRNOFF』。

ゲストの選曲から導き出される、バックグラウンド、歴史、価値観、哲学に迫る!

今回のゲストは、DJ、音楽プロデューサー、クリエイターとして35年以上にわたり活躍をつづける高木完が登場。藤原ヒロシとのヒップホップ・ユニット、タイニー・パンクスでの活動や、日本初のクラブ・ミュージック・レーベル、MAJOR FORCEの設立など日本の音楽シーンにおいて常に先鋭的な実積を残してきたレジェンド中のレジェンド。そのバックグラウンド、エピソードも実にきらびやかなものとなりました!

CHOICE 1
昔も今もずっと聴いている…高木完にとっての“永遠の名曲”
Public Enemy“Fight the Power”

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Fight the Power
Public Enemy

ジャンル: ヒップホップ/ラップ, ミュージック, イースト・コースト・ ラップ, ハードコア・ラップ

「パブリック・エネミーが初めて来日ツアーをしたのは1989年の春だったんだけど、その全公演をメジャーフォースでサポートしたんです。そのファイナルの神戸公演で、アンコールで披露したのが“Fight the Power”だった。聴いたことのないリリックだったからすぐに新曲だと分かりました。
MVで学ランを着てるシーンがありますよね? あれは京都に行った時にチャック・Dが『あれはなんだ?』って興味津々だったから、教えてあげたんです。あとでMVを見てみたら、プロフェッサー・グリフとS1Wが学ランを着てたからビックリしましたね(笑)。」

いきなりファン垂涎のビッグエピソードが登場! ヒップホップ史上もっとも重要なグループであるパブリック・エネミー。彼らの作品の中でももっとも人気が高く、音楽史上でも最重要曲のひとつである“Fight the Power”をリリース前に、日本で、しかもライブで体感しているという事実。まさに伝説の生き証人である。
差別や貧困といった社会問題を取り上げ、常に権力(Power)に真っ向から立ち向かう音楽スタイルは、時代や流行の変遷によって色褪せることのない、強固な魅力を放っている。

CHOICE 2
いまグッとくるバンドサウンド
The Internet“Girl feat.KAYTRANADA”

「以前からよく耳にする名前だったのでチェックしてたんですが、アルバムを聴いて一気に好きになりましたね。特にこの曲は聴いていて気持ちいいんですよね。
ちなみに、グッとくるシンガーならザ・ウィークエンド、ラッパーならケンドリック・ラマーですね」

タイラー・ザ・クリエイター率いるひときわ異彩を放つヒップホップ集団OFWGKTA(オッドフューチャーの通称で知られる)に所属するジ・インターネット。今年2年ぶりのニューアルバム「EGO DEATH」をリリースし、ますます注目を集めている。紅一点のボーカル、シド・ザ・キッドの類まれな歌声と存在感は、一度体感してしまうと虜になるはず。

CHOICE 3
印象に残っている、自身のプロデュースワーク
小泉今日子“RAIN”

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RAIN
小泉今日子

ジャンル: J-Pop, ミュージック, ポップ

「迷わず選びましたね。20年以上前の曲ですけど、自分の中でもこれは完璧というか、いまの自分の好きなサウンドにも通じるんですよね。それこそジ・インターネットやザ・ウィークエンドみたいな。全部生楽器で演奏してるんですけど、構成はヒップホップに近いんです。
あとカップリングには、オノ・ヨーコさんの曲“女性上位ばんざい”のカバーを収録しました。当時、アーティストとしてのオノさんに注目している人が少なかったので、それを今日子ちゃんに歌ってもらったら面白いと思ったんです。完成した曲を、CIBO MATTOのユカちゃんを通じてオノさんに渡してもらったんですけど、そしたらある日突然、僕の携帯が鳴って『ヨーコです』って(笑)。オノさんから直電がかかってきちゃって驚いた(笑)。もちろん気に入ってくれたんですけどね」

またもやとんでもないエピソードが飛び出す。さすがは御大!“RAIN”“女性上位万歳”は、小泉今日子のアルバム「TRAVEL ROCK」(1993年)に収録。現代のサウンドにも通じる気持ちのいいサウンドを堪能してほしい。

CHOICE 4
シチュエーション別で選曲【1】
真っ暗な部屋で聴きたい曲
The Weeknd“The Hills”

「新しい曲が大好きなんで、最近のものから選びました」

<CHOICE2>で“最近気になるシンガー”として挙げてくれたザ・ウィークエンドがここで登場。2010年に突如としてシーンに現れたこのシンガーは、ミックステープ3作品で世界中から注目を浴び、2013年のファーストアルバム「Kiss Land」で全米4位を記録。さらに今年8月に待望のセカンドアルバム「Beauty Behind the Madness」をリリースし、全米1位を獲得。チルウェイブやトリップホップ、ダブステップなどジャンルをクロスオーバーしたダウンテンポ気味のサウンドに響くメランコリックで官能的なボーカルは、異世界へ連れ立ってくれるような浮遊感がある。しかし、何十年もシーンの先頭に立ち続けていても、最新の楽曲をチェックして、いいものはいい!とてらいもなく断言できる姿勢には頭が下がる思いだ。

CHOICE 5
これまでに観た伝説のステージ
1978年5月に観た東京ロッカーズの初めてのイベント

「日本の初期のパンクバンドが5~6つ出演したイベントがあったんです。Friction、LIZARD、ミラーズ……。5~60人しか入らないようなすごく小さいハコで、800円くらいの入場料でね。日本のロックバンドはあまりいなかったから、それまではクィーン、エアロスミス、キッスとか日本武道館で観てきたんだけど、彼らのステージは僕にとってはファンタジーの世界だった。もちろんキャロルとかはテレビで観たことがあったけど、汗が飛んで来るくらい間近な距離で日本のバンドを生で観たことがなかったから、完全にノックアウトされた」

“東京ロッカーズ”とは、コメントにも出ていたバンド、Friction、LIZARD、Mr.KITE、ミラーズ、S-KENなどが巻き起こしたパンク~ニューウェイブ・ムーヴメント、ないしはムーヴメントを起こしたバンドマンたちの総称である。70年代後半に閉塞した日本のインディーズロック・シーンを打破していった彼ら。当初は毎週六本木でギグを行っていたが、その熱は徐々に全国各地に拡大していった。邦ロック史に刻まれるこの重大なムーヴメント、しかもその初回開催に立ち会ったという驚愕の事実。パブリック・エネミー、オノ・ヨーコのエピソードに続き、みたび驚かされることとなった。

CHOICE 6
シチュエーション別で選曲【2】
最高な夜に友達や仲間と聴きたい曲
Pink Floyd“Us And Them”

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Us And Them
Pink Floyd

ジャンル: プログレロック / アートロック, ミュージック, ロック

「聴けばわかる! 夜、屋内外問わず。季節問わず、国内外問わず、気の合う仲間とひと通り盛り上がった後で聴きたいですね」

ピンク・フロイドの名盤「The Dark Side of the Moon」(1973年。邦題は「狂気」)に収録された“Us And Them”。ザ・ウィークエンドやジ・インターネットと共通する浮遊感のあるプロダクションとなっており、現在の高木完のモードを示しているかのような選曲となった。

CHOICE 7
最近の日本のHIPHOPで気になる曲
東京弐拾伍時“LUCIFER’S OUT feat. AKLO”

「東京弐拾伍時を初めて聴いたときから、90年代のフレイヴァーをすごく感じて、アルバムの“LUCIFER’S OUT feat. AKLO”がMICROPHONE PAGERと同じサンプルネタを使ってたんです。そこで日本のヒップホップの流れが一気に繋がったんです」

DABO、SUIKEN、MACKA-CHIN、S-WORDとNITRO MICHROPHONE UNDERGROUNDに所属していたラッパーたちが奇跡の集結を果たした東京弐拾伍時。コメントにある通り、90年代を通過し、00年代に一時代を築き上げた偉大なるラッパー4人が現行シーンを突っ走るAKLOと共演したこの曲は、日本のヒップホップの一連の流れを見事に体現した一曲となっている。

80年代以降のヒップホップシーンでの活躍はもちろん、70年代のバンドとしての活動も含めると、実に35年以上にわたって日本の音楽シーンに多大な貢献を果たしてきた高木完。そのバックグラウンドとなると、過去の曲が中心になるかと思いきや、最新楽曲が多く見受けられる結果となった。元を正せば、高木完は常に“新しい”“面白い”ことを発掘し、世に紹介してきたパイオニア。むしろ最新の楽曲のセレクトこそが彼の真骨頂か。
しかし、出てくるエピソードのスケールの大きさは、これまでの回の中でも群を抜いており、さすがのレジェンドっぷりを見せつけてくれた。もっともっと色々なお題で選曲をしてほしい!

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