“グルメ系”の選曲師、FPMこと田中知之

毎週迎える全52組のゲストDJ/アーティストが選曲したプレイリストとともに、その“アーティスト像の裏側”= “BEHIND THE MIX”を探っていく『RDMS powered by SMIRNOFF』。

ゲストの選曲から導き出される、バックグラウンド、歴史、価値観、哲学に迫る!

第15回目のゲストは、Fantastic Plastic Machine(FPM)の活動で知られる田中知之。オリジナル楽曲はもちろんのこと、プロデューサーとしてCHARAやRIP SLYMEなどを手がけ、MIX CD「Sound Concierge」はこれまでに全11作がリリースされる大人気シリーズとなっている。今年はFPM活動20周年目にあたり、9月30日にベストアルバム「MOMENTS」をリリースしたばかり。国内トップDJ/プロデューサーでありながら、音楽以外にファッションやグルメなど他分野にも精通している田中知之の“裏側”に迫る!

CHOICE 1
みんなで騒ぎたいパーティーソング
Diana Ross“Ain’t No Mountain High Enough(FPM remix Taku-edit)”

「モータウンの天下の名曲ですが、一部をリコンストラクトして、僕が正規にリミックスを作ったんですが、m-floの☆Taku Takahashiくんが勝手にさらに派手にしてくれた(笑)。結局、僕も現場では自分のリミックスではなく、この曲ばかりプレイしています。すごくパーティ感があって、いいんですよね」

ダイアナ・ロスがシュープリームスを脱退し、ソロで初めて全米No.1を獲得した曲。オリジナルは、マーヴィン・ゲイとタミー・テレルによるもので、コメントにある通りFPMがリミックスを施し、さらに勝手に(笑)☆Taku Takahashiがリエディットをしたというプロセス。もう幾度手が加えられたのか……。しかし、名曲だからこそ、いまだにこうして何人ものクリエイターの手によって受け継がれているのだろう。ぜひ、オリジナル楽曲と聴き比べてみてほしい。

CHOICE 2
90年代の“東京”を想起する曲
Fatboy Slim“Rockafeller Skank”

「90年代後半からFPMとして頻繁にDJをするようになったんですけど、いままでのクラブシーンではありえなかった曲がかかるようになってきたというイメージが強い時代ですよね。それを象徴する曲が、ビッグビート。ロックとかファンクとか全部を飲み込んだジャンルがイギリスから出てきたというのは、単純にすごいなって思いました」

ケミカル・ブラザーズ、ファットボーイ・スリムなどが牽引した90年代のビッグビートムーヴメント。ハウスやヒップホップ、ディスコなど各ジャンルに存在したマナーをぶち壊し、ハイブリッドなダンスミュージックを創出、クラブ・ミュージックのその後に大きな影響を与えた。現在は、EDMが世界中の若者を熱狂させているが、90年代にもダンスミュージックのムーヴメントは存在したのは確か。同曲は1998年にリリースされ、全英・全米で大ヒットを記録。

CHOICE 3
オシャレなカジュアルフレンチレストランでかけるならこんな曲
Horatio&Gruia“La Cancion”

「僕は大阪出身なんで基本的には“安い食べもの”が好きなんです。ちょっと気負いすぎましたね、選曲。この曲はクラシックのドビュッシーのカバーになっていて、シャレてるな、と(笑)。いま、僕の中で一番オシャレな曲ですね。あと、僕は音楽では大した成果をあげていないけど、モツ鍋屋の『蟻月』を始めたのが、僕と友人なんですよ。いまは抜けちゃって、別のスタッフが頑張ってますけど、モツ鍋ブームを作ったのはちょっと自慢したいですね(笑)」

選曲は苦しかったようだが、まさかモツ鍋ブームの先鞭をつけたのが、田中知之氏だったというのは驚きだ。コメントで「気負いすぎた」と述べているが、それでもあまり人に知られていない楽曲がスッと出てくるあたり、さすがの一言。

CHOICE 4
ガッつき系の焼肉屋でかけたいハードな曲
Loleatta Holloway“Love Sensation (Gregor Salto Acid Vocal Mix)”

「いわゆるハウス~ディスコのクラシック曲なんですけど、このリミックスはTB-303のアシッドな感じと、こってりとしたボーカルが、“焼肉”を連想させました」

アシッディなサウンドにグルーヴィなボーカル。それを“こってり”と表現し、焼肉と結びつけるセンスこそがDJなのか、いや食にも精通する田中知之氏ならではの感覚なのだろう。原曲は、ロレッタ・ハロウェイの超名曲ではあるが、リミキサーはオランダ出身でラテン~アシッド・ハウスを得意とするグレゴール・サルト。彼の作品群の中には、<CHOICE2>でも名前が挙がったファットボーイ・スリムとの共作もある。

CHOICE 5
田中知之が思う、極上のラブソング
FPM“I Was In Love feat.細美武士”

「手前味噌で申し訳ないですが、自分の曲です。この曲を制作するときに、レコード会社にサンプリングに使える音源がないか聞いたんです。そしたら10ccの“I’m Not In Love”があって、『まさか!?』ってね(笑)。オリジナル曲に対してのアンサーソングのつもりで歌詞とタイトルを付けました」

FPMの2013年のオリジナルアルバム「Scale」収録の楽曲。10ccの名曲を大胆にサンプリングしたことに加え、the HIATUSの細美武士をフィーチャーしたことでも当時大きな話題となった。原曲に対するアンサーになっているとのことで、原曲が頑なに“恋をしていない”と伝える歌詞であるなら、同曲の歌詞は“確かに恋をしていた”と認めている。ぜひ、歌詞にも注目して聴き比べてみてほしい。

CHOICE 6
最近注目しているテクノの曲
Jimmy Edgar“Strike”

「いまさらテクノが好きだなんて言いづらいんですけど、ジャンルにこだわらず、かっこよかったら良いと思っていて、自分でもなんのDJなのかという線引きがどんどん曖昧になっているんですよ。ジミー・エドガーは僕の大好きなアーティスト。彼は出音がすごく良くて、ヘッドホンやイヤホンで聴いてもわからないんですけど、クラブでかけるとすごく鳴りがいい」

過去14回のゲストに共通するのは、いわゆる専門のジャンルでなくとも、おしなべて他ジャンルの楽曲にも精通しているという点を挙げることができる。
テクノのカテゴライズも難しい。以前出演したKEN ISHIIに言わせれば「作った本人がテクノだと思えば、テクノ」。田中知之にテクノの定義を問えば「音響系の音楽」とのことで、そんな観点から見てもジミー・エドガーの楽曲の “鳴り”の良さは魅力的なのだろう。

変化球の質問が多い回ではあったが、田中知之の音楽性の幅広さを示すような選曲となった。特に“グルメ系”の選曲は面白く、ぜひ次の機会があれば他の食べ物に関しても選曲をしていただきたいところ。また、それぞれのアンケートに対し、ジャンルも年代もバラバラであり非常に豊かな回答となった。これはクラブなどの現場で、田中知之のプレイを体感したことのある方なら、納得の結果だったのではないだろうか。
こうしたバックグラウンドの奥深さを知ってみると、今後はさらに彼のDJプレイを楽しむことができそうだ。

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