社会派ラップで知られる渋谷のドン、K DUB SHINE

毎週迎える全52組のゲストDJ/アーティストが選曲したプレイリストとともに、その“アーティスト像の裏側”= “BEHIND THE MIX”を探っていく『RDMS powered by SMIRNOFF』。

ゲストの選曲から導き出される、バックグラウンド、歴史、価値観、哲学に迫る!

第24回目のゲストは、Zeebra、DJ OASISとのユニット:キングギドラで日本のヒップホップシーン黎明期から先頭を走り続けてきたK DUB SHINEが登場!日本語にこだわるリリックや社会問題やタブーに切り込むスタイルは、シーンに大きな影響を与えてきた。そんな彼の選曲から見える意外な人柄とは!? 今回はメインMCのRYUのほか、フィメールDJとして大きな注目・人気を集めるLicaxxxとともにお届け!

CHOICE 1
若かりし頃、ライブで観て衝撃的だった曲
Run-D.M.C. “Run’s House”

「1987年か88年にオークランドで観たんだ。『Run’s House Tour』というツアーで、EPMDやパブリック・エネミー、DJジャジー・ジェフ&ザ・フレッシュ・プリンス(ウィル・スミスが在籍していたユニット)とかも出演していた。俺が初めていったヒップホップのアリーナライブ。この時、演出で火薬を仕込んでいたんだけど、それがあまりにもデカ過ぎて、ウィル・スミスが怒って帰っちゃったんだよね(笑)」

高校時代にアメリカ留学の経験があるK DUB SHINE。日本はおろか、アメリカでもようやくヒップホップが市民権を獲得し始めた80年代後半に、そうそうたるレジェンドが集結したヒップホップフェスを体験したK DUB SHINE。ヒップホップ史においてもこの重要なライブは、まさに“衝撃”だったはずだ。
しかも、ウィル・スミスが途中で帰るというエピソードは、SNSもない時代において、現場にいた者だけが知り得たプレミアムな情報だ。

CHOICE 2
「90年代の渋谷」と聞いて思い浮かぶ曲
キングギドラ“行方不明”

itunes

行方不明
キングギドラ

ジャンル: ヒップホップ/ラップ, ミュージック, J-Pop

「1995年12月10日にデビュー・アルバム『空からの力』をリリースしたんだよね(当番組のオンエアは2015年12月11日!)。まさに20周年だよね。
このときのラップを聴くと、つたなくて恥ずかしい。90年代は自分たちでキャリアを築いていくために、ガムシャラに活動していた時期だったよ。渋谷109にコギャルとかヤマンバギャルとかアムラーがいてさ、そういうのを横目にヒップホップをやってたね(笑)」

K DUB SHINE a.k.a. 渋谷のドン。渋谷のことはKダブに聞け! とばかりに渋谷にまつわる選曲をしてもらった。なんの偶然か、番組のオンエア日がちょうどキングギドラがデビューした日から20年と1日目。そのデビュー・アルバムに収録されたこの曲のリリックには、<CHOICE1>のエピソードにもつながる“Run-D.M.C.、KRS、ラキム、チャックD 忘れる訳ねえ87年”というバースもある。日本のヒップホップの夜明けを感じさせる名曲だ。ぜひリリックに注目しながら、当時のシーンに思いをはせてみてほしい。

CHOICE 3
「00年代の渋谷」と聞いて思い浮かぶ曲
K DUB SHINE“渋谷が住所”

「手前味噌ですが(笑)渋谷で思い浮かぶとしたら、やっぱりタイトルでこの曲がパッと出たね。この曲のサビにある“渋谷が住所”っていうフレーズは、さっきの『行方不明』のワンフレーズでもある。00年代は映画の製作に携わって、その舞台が渋谷だった。アルバムもサントラもリリースして、渋谷の街中がキングギドラ祭りになった2002年が思い出深いかな」

この曲は過去の自分を振り返るようなリリックが印象深い。02年にはキングギドラを再結成し、アルバム「最終兵器」が大ヒットを記録。メジャーシーンに大きな風穴を空け、窪塚洋介主演の映画『凶器の桜』では音楽監督を務めるなど、多岐にわたる活躍を見せてくれた。

CHOICE 4
時代を超えて愛される音楽って?
今でも普通に聞ける、70年代の曲でオススメを1曲
Billy Joel“The Stranger”

「洋楽に興味を持ったときになんとなく聴いてたけど、最近改めて聴き直したら、リリックがすごく良い。ビリー・ジョエルは、常に“ルーザー=敗北者”やブルーワーカーの視点でリリックを書いているんだよね。それがすごく響くし、メロディも独特の哀愁があって良いよね」

読者の方の中にも“昔聴いてた曲を数年後にじっくりと聴いてみるとより強く共感できた”というような経験がある人は多いかもしれない。音楽は、聴くシチュエーションや心境によって聴こえ方が変わってくるもの。Kダブもこの曲について、ティーンのときに大ヒットした曲として認識していたものが、いま聴くことで新たな価値を見出せた、ということに言及している。

CHOICE 5
30年後も普通に聴けそうな、わりと最近の曲
The Weeknd“The Hills”

「ウィークエンドは今年グラミー賞も獲得するんじゃないかなと思ってます。何年も前から名前はちょこちょこ出てたけど、ここぞというときに大ヒットした印象だね。歌い方とか変態的にオリジナリティあるし、いまを象徴するサウンドでありながら、すでにクラシック。30年後ってなると、このユニークさは絶対に印象に残ると思う。どんな音楽が時代を超えるか、ということの答えは、それまでの常識を壊してユニークなものを作ることかもね」

2015年の音楽シーンはウィークエンド抜きに語ることはできないだろう。“30年後も聴ける曲”になるには、単純にヒットするだけでなく、いかにオリジナリティとインパクトがあるかが重要。番組中にはマイケル・ジャクソンやプリンスを例に挙げて、時代を超える音楽とは何かを語ってくれた。

CHOICE 6
若い世代のアーティストで好きな曲
DNCE“Cake By The Ocean”

「最近の若いアーティストたちは、俺らのときよりジャンルレスで自由だよね。ヒップホップが進化を果たす過程で、いろんなジャンルの音楽を吸収したと思うんだけど、ヒップホップも同時にいろんな音楽に吸収されていった。そういった意味ではボーダーレスになってきているなって。俺らが若い頃と比べると、いまの若者は謙虚だし、ピースだと思うよ。俺らみたいな悪そうなヤツは渋谷でもあまり見ないしね(笑) この曲は、たまたまラジオで流れていて、すごく気に入った(笑)」

アメリカの4人組バンドであるDNCEは、この曲がデビュー曲。偶然出会った気になる曲とのことだったが、アメリカでは現在スマッシュヒット中。Kダブの嗅覚はやはり確かだということだろう。

CHOICE 7
この人の日本語の使い方が好き!と思うアーティスト
さだまさし“秋桜”

「みなさんは山口百恵さんの『秋桜』(コスモス)を想像するかもしれないけどね。この曲は、嫁いでいく娘がお母さんに贈る歌なんだけど、男の俺が言うのもなんだけど、泣いちゃうよね。さだまさしさんは、日本語の歌詞においては“神”だと思ってる。『関白宣言』や『親父の一番長い日』とか、涙なしでは聴けないよ(笑) 『道化師のソネット』もいいよな。あとは日本語の使い方っていうことで思い浮かぶのは、音楽家ではないけど、小説家の山崎豊子さん。この人の小説を読むと、自分なんか全然日本語を使いこなせていなくて、日本語のポテンシャルを活かせていないって感じる。もっともっと勉強しないとね」

さだまさしへの熱いリスペクトを語ってくれた様子は、今週のハイライトと言える一場面だった。バイリンガルのラッパーが少なくない中、日本語へのこだわりをデビュー当初から貫き通しているKダブならではの選曲に、納得した方も多いはず。

CHOICE 8
MC RYUに対して「これは聴いとけ!」と思うヒップホップ以外の曲
Calvin Harris & Disciples“How Deep Is Your Love”

「RYUもラジオ長いから知ってるとは思うんだけど、強いて挙げるならカルヴィン・ハリスとアデルかな。単純に最近のヒット曲だね。EDMは、昔のユーロビートブームに似ているなってイメージ」

MCのRYUに対し、“お前も最近のヒット曲、チェックしとけよ”と言わんばかりの選曲をしてくれた。ふたを開けてみたらRYUも普通に聞いている曲だったのだが。
意外だったのは“ヒップホップ硬派”のイメージがあるK DUB SHINEが、最近のヒット曲をジャンルを問わずにチェックしている点。アデルを次点にしたのは、聴いていると悲しくなって泣いちゃうからだそうだ。

これまでに多くのヒップホップアーティストに出演してもらったが、今回はそのどれとも異なる不思議な回となった。全面に漂う、哀愁と男の不器用さ、お茶目さ。これこそがK DUB SHINEのアーティスト性、キャラクターなのだろう。
楽曲で見せてくれる社会派、武闘派といったパブリックイメージとは異なる、音楽好きのK DUB SHINE。そんな一面を今回は堪能できたはず。

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