HIP HOPシーンのニュータイプ、SALUが登場

毎週迎える全52組のゲストDJ/アーティストが選曲したプレイリストとともに、その“アーティスト像の裏側”= “BEHIND THE MIX”を探っていく『RDMS powered by SMIRNOFF』。

ゲストの選曲から導き出される、バックグラウンド、歴史、価値観、哲学に迫る!

第38回目のゲストは、国内HIP HOPシーンのニュータイプ、SALUが登場! 2012年にBACHLOGICにフックアップされたことをきっかけに『In My Shoes』で衝撃のデビューを飾ると、その後HIP HOPシーンのみならず、さまざまなシーンで高い評価を獲得。さらに2016年4月20日には、待望の3rdアルバム『Good Morning』のリリースを予定している。今、最も注目を集める彼が、選曲から見せるアーティスト性に注目!

CHOICE 1
この曲を聴くとホッと落ち着く“音楽的ふるさと”な曲
Norah Jones“Don’t Know Why”

「この曲を聴くと、なぜか冬の札幌の車中を思い出します。中学校まで札幌にいたので、とある雪の日に聴いたんだと思います。雪の景色が浮かんで、なんか落ち着くんですよね。その頃の自分は、地味で目立たない子だったと思いますね(笑)」

SALUがセレクトしたのは、ノラ・ジョーンズのファーストシングルであり、グラミー賞を獲得した「Don’t Know Why」(2002年)。ノラ・ジョーンズを一躍スターダムに押し上げたこの名曲は、PVや歌詞からは“海”を連想するが、楽曲を聴きながら雪の景色を想像すると、これまた意外とハマる。名曲というのは、リスナーそれぞれのパーソナルな体験の傍らに存在し、どのようなシチュエーションにも当てはまるものだろう。

CHOICE 2
この人だけは越えられないかも、レジェンドの曲
Boss The MC“ILL-Beatnik”

itunes

ILL-Beatnik
Boss The MC

ジャンル: エレクトロニック, ミュージック, ダンス, ジャズ, バップ

「THA BLUE HERBは中学生の頃の登下校時にずっと聴いていましたね。ついこの間、厚木にTHA BLUE HERBのライブを観に行ったんです。BOSSさんのライブを観て、なにか参考にできればと思っていたんですけど、『あ、この人は別だ…』って痛感しました。SALUはSALUとして活動しなきゃって。“越える”とか“越えない”とかいう話じゃないですね」

日本のHIP HOPシーンのカリスマ、Boss The MC。SALUが幼少期を過ごした札幌は、彼の所属するTHA BLUE HERBの本拠地でもある。「ILL-Beatnik」は、HIP HOP界のレジェンドDJであるDJ KRUSHが結成したユニット“流”とのコラボ曲(1999年)。中学生の頃に憧れ、いま改めて感じたBoss The MCの凄さ。それは、もちろんパフォーマンスに圧倒されたこともあったと思う。

CHOICE 3
寝る前に聴きたい、リラックスできる曲
Bob Marley“Redemption Song”

itunes

Redemption Song
Bob Marley

ジャンル: レゲエ, ミュージック

「東京でも福岡でも札幌でも、都市で生活をすると、人よりも早く・長く・深く・大きく・多くやろうとしてしまって、現実・現実・現実で前のめりになってしまう。いつもの自分よりとっつきにくく凝り固まった人間になってしまう。そんな時にこの曲を聴くと、普段のマインドに引き戻してくれます」

RDMSで、もっともよく登場するアーティストのひとり、ボブ・マーリー。“いつもの自分に戻してくれる曲”というのは、誰もが1曲は持っているだろう。この楽曲は、シンプルなギターとボーカルの構成で静かな印象を受け、それだけでも精神安定の効果がありそうだが、その歌詞は意外と過激。“精神的奴隷の状態から解放せよ 解放できるのは自分自身だ”という強いメッセージは、まさにSALUが何かに囚われている状態から、自身をフラットに引き戻すための歌といえる。

CHOICE 4
SALUにとってのHIP HOPの定義とは?ギリギリHIP HOPだと思う曲
SALU “THE GIRL ON A BOARD feat. 鋼田テフロン”

「HIP HOPの定義は、僕もずっと考えているんですけど、HIP HOPな生き様をしている人が作った曲がHIP HOPなんだと思いますこれは僕のデビュー曲ですが、当時は『HIP HOPじゃない』『ラップじゃない』と言われたんです。僕も『そうなのかなぁ』って葛藤している時期があったんですけど、でも最近改めてPVを観る機会があって、じっくり観てみると『結構、HIP HOPしてるじゃん!』『お前、HIP HOPしてるよ!』って思いました(笑)」

マッチョなイメージのHIP HOPとは程遠い、童顔で色白という外見や、独特のフロウなど、とにかく規格外だったSALU。オリジナリティが突出しているがゆえに、デビュー当初は自身のスタイルに葛藤があった。鋼田テフロンをフィーチャーした「The Girl On A Board」は、SALUの代表曲のひとつで、これまでHIP HOPに馴染みが薄かったリスナーも惹きつけ、もちろんコアなHIP HOPファンにもフレッシュなイメージを植え付けることに成功した1曲。

CHOICE 5
気合いを入れたい時に聴く、激しい曲
Lady Gaga “Born This Way”

「最初にレディ・ガガが出てきたとき、自分には関係ないかなって思っていたんですど…。歌もタレント性もすごいし、『このまま行きなさい!』ってメッセージがあるので、この曲を聴くとすごくパワーをもらえますね」

その音楽性、人柄からも感じられるSALUのジャンルに対するフラットな感覚。それは楽曲のセレクトにも大きく現れているが、このレディ・ガガもそのひとつ。強烈なキャラクターで話題に事欠かないが、セルフプロデュース能力も含めて、とにかくエネルギッシュなガガ様。楽曲のクオリティも高く、“ありのままでいい”という強烈なメッセージは世界中の人に勇気と希望を与えた。

CHOICE 6
自分より下の世代の才能にびっくりした曲
Kiano Jones“Here.Alone”

「直接面識はないんですけど、NY出身神戸在住の16歳のアーティストです。最近はちょくちょく東京にも来ているみたいです。この曲を聴いてもらえるとわかると思うんですけど、16歳が作る曲じゃないですよね(笑) 下の世代からの突き上げは、常に感じていますね。みんな、すごい才能が豊かだし、『フリースタイルダンジョン』とかのテレビに出てこない若いラッパーもたくさんいるはず。
才能のある若い人たちは好きにやったらいいと思います。でも、たくさんの才能がそこまでメディアに取り上げてもらえていないような気がします」

2013年、弱冠14歳のときに発表した「HEAT feat. KID FRESINO」がドープ過ぎるとシーンの話題をかっさらったキアノ・ジョーンズ。早熟過ぎると評されたが、その後も順調に成長。スキルだけでなくオリジナリティに関しても、ティーンラッパーの中で他の追随を許さない存在感を発揮している。
SALUも下の世代からの突き上げを常に感じているとのことで、こういった切磋琢磨がよりシーンを大きくしていくはず。黄金期を迎えたと言っても過言ではない現在の日本のHIP HOPシーンの今後が楽しみだ。

CHOICE 7
ニューアルバム『Good Morning』制作期間中によく聴いていた曲
ベートーヴェン“ピアノ・ソナタ8番”

「ベートーヴェンの他にも、リスト、ラヴェル、ドビュッシーなどクラシックをよく聴きました。生活をしていると、テレビや話し声など、いろいろな言葉の影響を受けてしまうんですよね。
なのでアルバム制作中はなるべく言葉の入っていない音楽を聴くようにしていて、ゼロとは言いませんが、それに近い状態にしようと思っていました」

メッセージ性が強く、言葉を巧みに操るヒップホップだからこそ、制作中は“強い”言葉をシャットアウトしたくなる。子供の頃は、クラシックに対してつまらないイメージが強かったそうだが、いまではすごく情景が浮かぶ音楽だと気づいたという。イメージを湧かせて、自分の言葉を吐き出す。最新作『Good Morning』にも情景が浮かぶ楽曲がきっと多く収録されるのだろう。

CHOICE 8
ニューアルバム『Good Morning』からオススメを一曲
SALU“ハローダーリン”

「聴いてもらえればすぐにわかる曲になっていると思います」

制作中に「これじゃない!」を繰り返しているうちに、窓を見るともう朝日が…。「やばい朝だ!」と思ったことから、アルバムタイトルに“グッドモーニング”と付けたというSALU。
本作に収録されているこの「ハローダーリン」は、そんなアルバム制作時のエピソードにリンクするリリックが盛り込まれ、とにかく好きな人に会いたいがテーマ。爽やかで心地よい曲調もあいまって、チルアウトしながら聴くことができる良曲に仕上がっている。

その音楽性の如く、変幻自在に、ときにピュアなまでにストレートなセレクトをしてくれたSALU。HIP HOPはもちろん、レゲエ、ジャズにレディ・ガガからベートーヴェンまで、幅広いジャンルからのセレクトを見せてくれた。コメントからも彼の音楽哲学を端々に感じることができ、冷静な視点の熱いメッセージが伝わってきた。選曲からアーティスト性を紐解く、RDMSのコンセプトにピッタリとハマったインタビューとなった。

OTHER ARTIST
続けて読みたい! あなたにオススメの記事