キャリア30年以上を誇るDJ WADAの素晴らしき音楽造詣

毎週迎える全52組のゲストDJ/アーティストが選曲したプレイリストとともに、その“アーティスト像の裏側”= “BEHIND THE MIX”を探っていく『RDMS powered by SMIRNOFF』。

ゲストの選曲から導き出される、バックグラウンド、歴史、価値観、哲学に迫る!

第43回目は、30年にも及ぶキャリアを誇るベテラン、DJ WADAが登場! その経験に裏打ちされたテクニックとプレイスタイルは、オーディエンスのみならずアーティストからも厚い信頼が寄せられており、DJ WADA名義のほかCo-Fusion、Atom名義でもリリース多数。国内テクノシーンのトップDJとして活躍を続けるDJ WADAの膨大なキャリアを選曲から読み解く!

CHOICE 1
実はロックギタリストからキャリアがスタートしたDJ WADAが今でも大好きなロックの曲
Pink Floyd“On The Run”

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On The Run
Pink Floyd

ジャンル: ロック, ミュージック, サイケデリック, ハードロック, アリーナロック, プログレロック / アートロック

「あらためて聴くとロックじゃないみたいですよね(笑) この曲は、『テクノと初めて出会った』といった雰囲気に近いかもしれません。もともとギターをやっていたので、T・レックス、デヴィッド・ボウイなどのグラム・ロックからレッド・ツェッペリンのようなプログレッシブロックを追いかけていました。この曲との出会いは、ギターではなくシンセサイザーの音に出会った衝撃の方が大きいですね」

1973年にリリースされたピンク・フロイドの歴史的名盤『狂気』(原題:The Dark Side of the Moon)に収録された「On The Run」。ビルボードにおいて15年間(741週連続)に渡ってチャートインするなど怪物的な記録を持つアルバムであるが、その作風は決してポップではない。サウンドは非常に難解にして哲学的。アルバム全編にわたって、心音や爆発音や笑い声など様々なSEを使用しており、アルバムの最初と最後がつながっているという構成になっている。この革新性は、驚愕をもって迎えられ、多くのアーティストに影響を与えた。特にこの「On The Run」は、“テクノ”という言葉が生まれる以前の楽曲で、テクノ創世記へと続くゼロ地点となった楽曲と言ってもいいだろう。

CHOICE 2
90年代初頭にはアンビエントDJとしても活動、当時よくかけていたアンビエント
The Orb“Little Fluffy Clouds”

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Little Fluffy Clouds
The Orb

ジャンル: エレクトロニック, ミュージック

「当時はシカゴ・ハウスをよく聴いていたのですが、アメリカ的なサンプリングカルチャーとは違うサウンドで興味を持ったんです。芝浦GOLDの『LOVE & SEX』というフロアで、民族音楽を含めたラウンジ的なアプローチをしてました。僕がアンビエントの方向に変えるきっかけとなったユニットが、このジ・オーブです」

30年というキャリアのなかで、もちろんDJ WADAにも様々な音楽的変遷があった。90年代初頭は、アンビエントに傾倒していた時期にあたるが、これは<CHOICE1>の選曲であるピンク・フロイドとのつながりを示すもので非常に面白い。
ダンスミュージックにおいての“アンビエント”とは“アンビエント・ハウス”や“アンビエント・テクノ”を指し、80年代後半から90年代初頭のヨーロッパで一大ムーブメントとなった“セカンド・サマー・オブ・ラブ”や“マッドチェスター”の熱狂を沈静化するかのようなチルアウト音楽として拡大した。その生まれた背景には“環境音楽=アンビエント”とピンク・フロイドらプログレッシブ・ロックの影響があった。まさにDJ WADAは、世界的な音楽の流れとともにキャリアを積んできたのだ。

CHOICE 3
東京の伝説的テクノクラブ:Maniac Loveでの思い出深い1曲
Robert Armani“Circus Bells(Hard Floor Remix)”

「キャリアでいちばん長く関わっていたクラブなので、“家”みたいな感覚ですよね。テクノの箱というイメージが強いですが、アンビエントのイベントがあったり、ベリーダンスがあるイベントがあったり、幅広かったです。
他にも“暗黒舞踏”の人がゲストで出たり、良い意味でめちゃくちゃに予想を裏切られて、面白かったですね。いまは画一的なクラブが多いので、もっとイメージが異なるクラブやパーティがあっても楽しいと思います」

“テクノ総本山”とも称され、週末ともなると翌日の昼過ぎまで営業していることでも有名だった(いまでは考えられないが)伝説のクラブ:Maniac Love。DJ WADAはレギュラーイベント『Sublime』でのレジデントを12年間務めており、Maniac Loveの歴史をもっとも近くで見てきたDJのひとりである。
当時のクラブシーンは、もっとぶっ飛んでいたカルチャーであり、それぞれのクラブが個性を打ち出し、趣向を凝らしたイベントを開催、切磋琢磨しながらシーンを拡大させていった。“非日常”を味わえるエンタテインメント空間として、存在感を見せていた。

CHOICE 4
これぞテクノ中のテクノ!な曲
Edge Of Motion“Quantity Of Motion”

「僕にとってテクノの定義は、エレクトリックで反復音楽。あと個人的には未来や宇宙だったり、なんらかの世界観を感じられるのが好きですね。」

2000 AND ONE名義で知られるDylan HermelijnとGertjan Schonewilleによるユニット、エッジ・オブ・モーション。「Quantity Of Motion」は、彼らの1993年のアルバム『Planet Gong Realities』に収録されている。
ダンスミュージックのテクノは、デトロイトテクノを指すことが一般的には多いと思うが、DJ WADAのコメントからは、クラフトワークやYMOなどが創造した未来的なサウンドをも含んでいるとも思える。
“近未来の風景”を音から想像する。それは、打ち込み音楽が当然となった今では希薄なイメージかもしれないが、テクノサウンドが生まれた当初は、リスナーに無限の想像力をもたらしてくれた。

CHOICE 5
プライベートでよく聴いている、テクノ以外の曲
Bill Frisell“Disfarmer”

「やっぱりギターの音が好きなんですよね。よく寝る前に聴きますね。」

ビル・フリーゼルの牧歌的なギターサウンドを聴けば、誰もが心地よく落ち着いた気持ちになることができるはずだ。フォーク、カントリー、ブルース、ジャズなど横断した、温かみのあるギターサウンドは、<CHOICE3>で挙がった“テクノ”とは対極に位置するかもしれない。
近未来的な無機質なサウンドに現実には見ることのできない世界を想像し、人が奏でる叙情的なギターサウンドで心を安静させる。音楽はこんなにも人間の様々な感情に訴えかけてくる。

CHOICE 6
近頃のDJ WADAはこんな感じ!最近手掛けた作品
DJ WADA“the blue door”

「2014年に<Diretta>というアナログレーベルをスタートさせて、この曲は3枚目のリリースになります。自分がDJプレイしているときのイメージが強く出ていると思います」

<CHOICE1>~<CHOICE5>までで見てきたDJ WADAの音楽的背景。その全てが詰まったと言っても過言ではないのが、この最新楽曲「the blue door」。ダンスミュージックが持つ享楽性に、プログレッシブ・ロックの哲学、フリージャズのアプローチなど多彩なジャンルのエッセンスが散りばめられたテクノは、そのストーリーラインも見事。DJ WADAのドラマチックなプレイをそのまま凝縮したような1曲に仕上がっている。

キャリア30年以上を誇るベテランDJならではの見事は音楽造詣と、音楽の歴史をなぞるような説得力ある選曲の数々に、☆Taku Takahashi&TJOも脱帽。
DJ WADA自身は言葉を多く使うことはなかったが、その選曲は実に雄弁。音楽の楽しさ、進化を改めて知るとともに、DJ WADAの音楽性もより深く理解できる、貴重な回をお届けすることができた。

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