アシッド・ジャズが鳴り響く大阪の寿司屋の長男Seihoの登場

毎週迎える全52組のゲストDJ/アーティストが選曲したプレイリストとともに、その“アーティスト像の裏側”= “BEHIND THE MIX”を探っていく『RDMS powered by SMIRNOFF』。

ゲストの選曲から導き出される、バックグラウンド、歴史、価値観、哲学に迫る!

第51回目のゲストは、テン年代を代表する気鋭アーティスト、Seihoが登場!アシッド・ジャズが鳴り響く大阪の寿司屋の長男として生まれ、幼少期から音楽の洗礼を浴びつづけてSeihoは、「I Feel Rave」の大ヒットで一躍シーンの寵児として注目される。その後、フライング・ロータスやディスクロージャーなど世界のトップアーティストとの共演を重ねる一方で、Avec Avecとのデュオ:Sugar’s Campaignでも精力的に活動。今年に入り、USツアーを敢行するなど世界的に注目を集める中、3年ぶりのアルバム「Collapse」で世界デビュー! 現代を代表する異能がなにを語るのか!?

CHOICE 1
初めて憧れたアーティストの曲
Stuff“Dixie, Up On the Roof”

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Dixie, Up On the Roof
Stuff

ジャンル: ポップ, ミュージック, R&B/ソウル, ファンク, ジャズ, ロック

「『Dixie』と『Up On The Roof』のメドレーですね。スタッフは、スタジオミュージシャンたちが集まった伝説のバンドで、僕がギターを始めるきっかけとなったアーティストです。80年代のフュージョンやポップスのギターは、ほとんどがスタッフのコーネル・デュプリーかエリック・ゲイルという偉大なギタリストなんです。バックギターなんだけど、ちょっとだけ前に出てくるようないぶし銀の存在感が最高です」

バンドのメンバー全員が、一流のスタジオミュージシャン。いわば裏方だが、そのメンバーの豪華さゆえに、1970年代には夢のスーパーグループとして、フュージョンシーンを牽引したバンド、スタッフ。なかでもSeihoがもっとも影響を受けたのが、ギターのコーネル・デュプリーとエリック・ゲイル。特にエリック・ゲイルは、ザ・ビートルズ、ビリー・ジョエル、チャーリー・パーカー、フランク・シナトラ、ダイアナ・ロスなど、関わったアーティストは数知れず。“ギターの神様”と称される最高のギタリストだ。Seihoの音楽キャリアのスタートもギターから。一曲目から現在の彼のパブリックイメージとはまったく異なる楽曲をセレクトしてくれた。

CHOICE 2
アーティストとしてシンパシーを感じるアーティストの曲
Albert Ayler Trio“Ghosts: First Variation”

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Ghosts: First Variation
Albert Ayler Trio

ジャンル: ジャズ, ミュージック, アバンギャルド・ジャズ

「この選曲では、時代を超えたアーティストを選びたいなと思いました。アルバート・アイラーは、フリージャズのパイオニアのひとりです。個人的に魅力だと思うのは、狙っているのか、天然なのかわからないところ(笑)
自分に無いものも持っていて、似ているものある。そこにすごくシンパシーを感じますね。逆にいま活動しているアーティストでシンパシーを感じている人たちとは、どんどん会っています。マシュー・ディヴィットやコラ、アルカなど、同じ時代に生きている人とは国境を越えても繋がれる。そういうアーティストと共演できると、“同じ時代に生きててよかったな”って思いますね」

オーセンティックなジャズをぶち壊して、フリージャズという概念を打ち出したアルバート・アイラー。 “破壊と創造”を体現した偉大なアーティストである。後世のアーティストに多大な影響を与えたが、そのフリーフォーム、既成概念からの脱却は、まさにSeihoと通じるものがある。
「音楽は時代を越えるものだからこそシンパシーを感じる」とSeihoは強く言う。Seihoは、過去のアーティストにシンパシーを感じることで音楽の“力”を感じ、現代に生きるアーティストと共演をすることで音楽の“喜び”を得ている。

CHOICE 3
このひと変態やわ~と思うアーティストの曲
Jameszoo“Flu feat. Arthur Verocai”

「なんで、この質問だけ関西弁なんですか。関西人すべてを敵に回しましたね(笑) この人の作品は、自身の好きなもの、大事なものだけに帰結しているというか、宝物みたいな感覚があるんですよね。かと言って、無茶苦茶やっているだけではなくて、すごくバランスもいい」

ジャズとビートミュージックの融合を図り、アメリカ西海岸から世界に衝撃を与えつづけてきたフライング・ロータス。彼が主宰するレーベル:Brainfeederから今年、満を持してデビューアルバム『Fool』をリリースしたのが、ジェイムスズー。Brainfeederもまたアルバート・アイラーの“破壊と創造”の哲学を引き継いでおり、その最新版を本作で楽しめることができる。その収録曲「Flu」は、ブラジリアン・フュージョンの巨匠:アルトゥール・ヴェロカイをフューチャーした、新世代ジャズに一石を投じる革新的なプロダクション。

CHOICE 4
同世代のライバルの曲
Metome“Feather”

「metomeくんだけじゃなくて、And Vice VersaやMagical mistakes、madeggなど、大阪や関西にいる友人たちはみんなライバルだと思っています。“同世代”で考えてもアーティストそれぞれの個性があるので、特徴を挙げるのは難しいですね。逆に同じ時代に活動していると、“差”や“違い”の方が強く感じられますね」

メディアは、異なる音楽をなにかとひとつにカテゴライズしたくなるもの。もちろんそれぞれに共通項はあるはずだが、Seihoの言う通り、恐らく比較するほどに、キャリア、制作方法、哲学など、差異が目立つことにもなるのだろう。そんなオリジナリティ溢れる次世代アーティストたちは皆ライバルだと言うSeihoがセレクトしたのはMetome。Seihoと同様大阪を拠点に活動するアーティストであり、盟友とも言える間柄で、だからこそ意識もするし、影響し合う、いい関係性が出来ているのだろう。

CHOICE 5
近頃のSeihoはこんな感じ!最近手掛けた作品
Seiho“The Vase”

「映画のようにカットを録りためていって、それを繋げていったような曲です。10~20秒の短いセンテンスを作って、それを並び替えてストーリーになるように作っていきました。アルバム『Collapse』のいちばん重要な曲ですね。
“VASE=器”という意味で、ジャケット画像は、生花と陶器の写真になっています。でも、生花は本物を撮影したもので、陶器はCGなんです。リアルとヴァーチャルの境目をいかに無くしていけるのか。その両方が普通に存在する世界になれば、なぜ花を綺麗に感じるのか、なぜ器を創りだすのか、という意味が際立っていくと思っています」

最後は、Seihoの深い部分に触れるような答えとなった。自身が感じていることを上手く言葉で表現できないもどかしさも感じたようだが、こういった想いこそが音となり、曲となっているのかもしれない。彼の発言の断片、文字間に創造を巡らせながら、「The Vase」をじっくりと聴きこんでほしい。

天才か奇才か。自分の内にある感覚や感情を表現するには音楽しかなかった。Seihoは、そう感じさせるアーティストだった。彼のキャリアがギターから始まり、ジャズに影響を受け、電子音楽の洗礼を浴び、いまに至る。同じ音楽でも、聴く人が違えば、感じ方も異なるというごく当たり前のことを、今回の選曲では再確認することができたはずだ。
そして、Seihoという“器”が様々な音楽で満たされ、溢れ出てきたものが彼の作品となっている。そこに大阪の血が通った“面白さ”を追求する精神性が備わったとも思えるSeihoトークだった。今後も彼の動向から目が離せないのは言うまでもない。

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