風営法改正!! Watusiが語るクラブの未来

毎週迎える全52組のゲストDJ/アーティストが選曲したプレイリストとともに、その“アーティスト像の裏側”= “BEHIND THE MIX”を探っていく『RDMS powered by SMIRNOFF』。

ゲストの選曲から導き出される、バックグラウンド、歴史、価値観、哲学に迫る!

第52回目のゲストは、Lori Fineとのユニット、COLDFEETのプログラマー/ベーシスト/DJとして活躍するWatusiが登場。そのユニークな世界観は、国内外で高い評価を受け、USやヨーロッパ、アジア各国で多くの作品をリリース。またファッションシーンともリンクし、ハイブランドへの楽曲提供も多数。そして、6月23日に施行された改正風営法の実現において中心的役割を果たした“C4”こと「Club and Club Culture Conference」のメンバーでもあり、長年クラブシーンの中核を担ってきた重要人物! 法改正が実現したいま、Watusiは何を語るのか?

CHOICE 1
聴けば青春時代に引き戻される曲
Sade“Your Love Is King”

「シャーデーがデビューした1984年頃は、すでに僕もプロになっていて、もう大人でした。ちょうどMTVも始まって、日本にもクラブが出来始めた頃なんです。それまではディスコばかりでした。だから、それまで僕が遊びに行っていたのは、ロック喫茶。新宿にあるサブマリンとかローリングストーンズとかに行って、週末にテキーラを飲んで、踊りまくる。いまのクラブのハシリみたいな感じですよね。(ディスコとクラブの違いは?)NYでディスコが流行ったのは、マイノリティが呼吸できる場所がそこしかなかったからだと思うんです。みんなで踊ることによって仲間ができる。クラブは、ジャンルが細分化されて、ある特定の音楽ジャンルを楽しむという部分が強いかな」

1984年にUKで華々しくデビューを果たしたバンド、シャーデー。AOR、ソウル、ジャズが融合した高クオリティのサウンドは、本国UKから世界中に伝播。各国で多数のアワードを受賞した。シャーデーの楽曲は、日本のディスコでもヘビースピンされた。Watusiはディスコ以前のロック喫茶に通っていたと言うが、その後のディスコカルチャー、クラブカルチャーへの流れは<CHOICE2>以降で語られる。

CHOICE 2
若い頃は魅力がわからなかった、でも今は大好きな曲
Cheryl Lynn“Got To Be Real”

itunes

Got To Be Real
Cheryl Lynn

ジャンル: R&B/ソウル, ミュージック, クワイエット・ストーム, ディスコ, ソウル, ロック

「80年代は、ディスコの箱バン(お店の専属でライブをするバンドのこと)をやっていたんです。本当はロック、パンク、ニューウェイブをやりたいんだけど、とにかくディスコをやらされた(笑) だから、当時はディスコが大っ嫌いだったんだよね。結構、トラウマ(笑) やりたくないことをずっとやらされていたからね。でも、3.11以降にようやくディスコの歴史やみんなで多幸感を共有するディスコの素晴らしさが理解できた。それでディスコを聴きあさるようになって、最終的には本まで出しちゃいました(笑)」

日本でディスコブームが起きたとき、Watusiはそこでバンドとして夜な夜なディスコナンバーを弾いていた。その葛藤はコメントにある通りだが、バンドマンという“第三者”としてステージから、踊りまくるオーディエンスを少し覚めた目で眺めていたのかもしれない。その心境に変化があったのは、2011年3月11日。アーティストに限らず、多くの人の価値観に影響を与えた大震災。Watusiにとって“ひとつの音楽で多くの人が感情を共有する”素晴らしさに気づいた。そのあたりは彼の著書「DANCE CLASSICS Disc Guide~Seed of Club Music~」(リットーミュージック)に詳しく書いてある。

CHOICE 3
期待している若手世代のアーティストの曲
Hiatus Kaiyote“Jekyll”

「若手と言ったら失礼なくらいメジャーだし、色んな賞にもノミネートされているんだけど、ハイエイタス・カイヨーテを挙げます。たまたま今年の3月にジャカルタでのフェスで一緒になって、先日の『GREENROOM FESTIVAL』でも一緒だったんですよね。クリス・デイヴみたいにドラムやリズムを変拍子にした肉感的に響かせる新しいジャズ。でも、彼らのルックスは、パンクスみたいなんだよね。そんな格好からのネオソウルっていう裏切り方とか最高だよね」

オーストラリア・メルボルン発のバンド、ハイエイタス・カイヨーテ。そのヒッピーのようなパンクスのようなアナーキーなルックスとは裏腹の、オリジナリティ溢れるフューチャーソウル~R&Bサウンドは、いまや世界中で絶賛されている。彼らは8月に来日公演を予定しているので、気になる方は要チェック!

CHOICE 4
「Club and Club Culture Conference」での活動において、Watusiの個人的なテーマ曲
Simon & Garfunkel“America”

itunes

America
Simon & Garfunkel

ジャンル: フォーク, ミュージック

「3.11と同様に僕らのなかでは9.11もかなり大きな事件だった。ダンスミュージックが好きだった人の“ユナイトする”という幻想が崩れた瞬間だったと思う。その流れで、アメリカがやってきたことの功罪も明確になってきた。“風営法”は敗戦国である日本がアメリカに押し付けられた悪しき法律のひとつなんです。“3点セット”なんて言われるけど、“客を躍らせる設備”“深夜”“お酒”。この3つを組み合わせちゃいけないっていう法律だった。細かい規定はあるんだけど、法改正によって、いまでは合法的に朝まで営業できるようになりました。でも、窓がひとつ開いただけで、これからだとも思っていますし、それでも法律を変えることができるんだなって思いも強い。自分の周りがつまんないっていうのは、結局自分のせい。僕が動いたのは、子どもの世代、孫の世代のことまで考えてのこと。5年後、10年後を強く思っていたら、うじうじしていられない」

サイモン&ガーファンクルの「America」は1968年のリリース。ベトナム戦争のさなか、はたして何が正義で、誰が正しいのか、多くのアメリカ人たちがそんな疑問を抱いていた時期であり、歌詞はその社会情勢を如実に反映している。2人の恋人が希望をもって旅に出る、まるで小説のような歌詞は、最後には“虚しく、苦しい”と変化していく。そんな世界観は、2001年の“9.11”で感じた虚しさと重なる部分も多い。いま現在の状況を漫然と受け入れるのではなく、疑問を持つこと。そして、自ら動くこと。Watusiの言葉からそんなメッセージが伝わってくる。

CHOICE 5
風営法改正の実現に際して、いま皆と分かち合いたい一曲
Lionel Richie“All Night Long(All Night)”

「ベタだけど、やっぱりこれかな(笑) 当時は大嫌いだったディスコが、バラバラの思いを持つ人たちを結ぶ強度のある音楽だと思い知りました。クラブだけでなくて、バーでも、レストランでもいろんなところでいろんなDJのプレイを“オールナイトロング”で楽しめるようになって、シーンはもっと豊かになってくると思う。“Club and Club Culture Conference”は法律を変えるために始まった運動なので、目的を達したいま、解散しようと思っています。今後はもっと広義の動きができれば、とも考えています」

ライオネル・リッチーの1983年のセカンドアルバムからのシングルカット。1984年のロサンゼルス五輪の閉会式の公式ソングにもなるなど、世界中で大ヒットを記録した。法改正され、“オールナイトロング”で音楽を楽しめるようになった。最高の音楽、最高のお酒、最高の仲間。そんな空間が日本に在り続けるために、Watusiの活動は今後もまだまだ続いていく。

いわゆるクラブアンセムは1曲もセレクトされず、ダンスクラシックやディスコ、はたまたサイモン&ガーファンクルまで、Watusiが過去に影響を受けた音楽の文脈が語られたのは興味深かった。また特に今回は、風営法改正のタイミングで出演し、その心境をダイレクトに伝えてくれたことに感謝したい。現状を打開していくのは、常に高い志を持つ者だけだという、そんな強いメッセージが込められた回となった。

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